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代々受け継がれる伝統の味【鮎の甘露煮】 (割烹 守口屋)

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骨ごと食べられるのに身はふっくら

綺麗に揃った大きさと形、べっ甲のように輝く照り。これぞ、甲佐ブランド「こうさんもん」の認定品にもなっている「守口屋」の鮎の甘露煮です。贈答用はもちろんのこと、“ご近所さんの毎日のおかず”としても長年愛されてきました。

こちらの甘露煮、細かい製造方法は企業秘密だそうですが、少しだけ、こっそり教えていただきました。一つ目は、均一に炊き上がるよう、ある程度の量(50尾ほど)を一度に炊き上げるということ。そのため、味が整いやすくなります。二つ目は、ゆっくり時間をかけて火を入れることで、身が縮まらずふっくらし、骨まで食べられるようになること。つまり、火加減の調節が命です。

その日の気候によって炊く時間や火加減は変わります。代々受け継がれてきた伝統だからこそ成せる技です。味付けは和食の基本にそったもので、冷めても美味しく食べられます。「炊き上がり直後は照りがもっとすごいんですよ」と語るのは、5代目当主の江上昌隆さん。東京や大阪で料理の腕を磨いた後、20年ほど前から4代目となる父母、そして妹と4人で店を切り盛りしています。

誠実に、ひたむきに、人々の口を守る

創業は明治25年。魚屋のスタートからでした。4代目が生まれた頃には料理を出すようになり、式場が無い時代はここで結婚式も行われていたそうです。現在も、慶事や法事を主体に、仕出しの鉢盛や弁当などを手掛けています。

昭和50年頃からお店の料理の一つとして提供していた甘露煮ですが、昭和60年頃から専用の木箱に詰めて各地へ発送するようになりました。鮎の焼き印に愛らしさを感じます。敢えて真空パックにはせず、その時の鮎の美味しさを閉じ込めています。賞味期限は1週間ほどと短めです。

「それでいいという方に受け入れてもらっていると思っています。こだわりは大事にしたいので。ただ、冷凍保存も可能なので、食べたい時に冷蔵庫で自然解凍すれば美味しく食べられますよ」。

4代目からもこっそり、お店と町の歴史が詰まった手書きのノートを見せてもらいました。明治7年生まれの初代の次作(じさく)さんが、食べ物が少ない時代に魚屋を始めたこと、甲佐の町の人々の口を守りたいという願いを込めて「守口屋」という屋号にしたことが記されています。“とんちのきく、おだやかなおじいさん”と、次作さんの人柄も垣間見えます。

また「必然ともいえる出会いから鮎の甘露煮が生まれた」とも。贈答用の木箱入りは53,000円(税込・送料別)ですが、自宅用だから箱は要らない、一人暮らしだから1尾でいいなど、日常的にご近所さんたちの口を守っています。

協力し合いながら地域を守る

守口屋では、老人会や町内会、学校行事や役場の集まりなど、大人数の団体さんにも対応しています。事前予約で「鮎三昧御膳」なるものも味わえます。鮎の甘露煮はもちろん、塩焼きや味噌焼きなど、まさに鮎三昧。季節によっては鮎が子持ちだったり、時には鮎の天ぷらが出たりすることもあるそうです。

また、5代目の息子さんが生まれた時に植えたという自宅庭の柚子やレモンは、彼が高校生になった今も大きな実をつけます。それを使った自家製の味噌で、鮎の味噌焼きは作られています。

本業以外にも地域の仕事を掛け持ち、毎日忙しくされている5代目。「何かあれば自分ができることは協力したいと思っています。地域の人はみんな同じ思いでは?自分が生まれ育った町ですから」。お店の目の前を流れる大井出川(おおいでがわ)沿いの植栽スペースへの水やりも当番制です。

これまであまり、お店のことや自分のこと、町のことを表立って話してこなかったという5代目ですが「発信していくことも大切ですよね。地域の方たちも町が活性化することを望んでいると思います」と少し照れながら答えてくれました。変わらぬ伝統の味とともに、町の歴史はこれからも大井手川のように脈々と受け継がれていくと確信しました。

 

INFORMATION

割烹 守口屋

今回ご紹介した「鮎の甘露煮」は、ふるさと納税の返礼品にも なっているので、気になる方はチェックしてみてください。
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/43444/4651168

住所
〒861-4601
熊本県甲佐町緑町岩下165 MAPはこちら
TEL
096-234-0016