「聴くこと」の専⾨家が徹底的に「聴く」⽣徒⾃⾝の語りを引き出す新しい対話型プログラム
今年、創⽴101周年を迎えた甲佐⾼校で「⾯⽩い授業」をやっている、との情報を⼊⼿し取材に伺いました。
気になる授業は、ZOOMを利⽤したオンラインプログラム。
実際に⽬の前にいる先⽣ではなく、画⾯上に現れる⽣徒にとっては全く知らない⼤⼈(ファシリテーター)の進⾏で対話を⾏なっていきます。
これは甲佐⾼校内にある町の公営塾「あゆみ学舎」がコロナ禍のオンライン交流で繋がった⼀般社団法⼈イキハタの尽⼒で、主に関東圏で活動するキャリアコンサルタント、産業カウンセラー、スクールカウンセラー、公認⼼理⼠など、多様なキャリア・⼼理⽀援職にある専⾨家の協⼒を得て、甲佐⾼校と共同で実現した授業プログラムです。
対象は甲佐⾼校1 年⽣31 名。クラスに関係なく3〜4 名で1グループとなり、各グループ毎に1〜2名の専⾨家がファシリテーターとして関わり、その⽇設定されたテーマに沿って対話の場を形成していきます。
この⽇のテーマは「ともだち」
「ともだち」に関する「問い」について考えます。「知り合い・友達・親友の違いって何だろう?」「ケンカするほど仲がいい?」「どんな⼈と友達になりたい?」「ケンカした経験は?」ファシリテーターの問いかけに対して、⽣徒たちはどんどん⾃分の⾔葉、意⾒を発信していきます。
その⼀つ⼀つの⾔葉をファシリテーターは丁寧に受け⽌め、他の⽣徒に問いかけたり、違う考えを提⽰したりしているうちに、どんどん内容が深まり掘り下げられていっているようです。
授業後の⽣徒さんからは「今まで⾃分で気づかなかったことに気づけました」、「⼈と話すのが苦⼿だったけれど、これからはもっと⼈と関わっていきたいと思います」などと、何とも前向きで明るい感想を聞くことができました。
担当の先⽣に詳しくお話を伺ったところ、このプログラムは10回を予定していて、⼀学期は「⼈に話すこと」、⼆学期は「他者の意⾒を聴くこと」に焦点を当て、1 年間の対話プログラムを通して、⽣徒⾃⾝が⾃分の良いところや得意とするところに気づき、進路に⽣かしていけるよう意図しているとのことでした。
今回、授業を⾒学させていただいて驚いたのは、⽣徒の皆さんが堂々と⾃分の意⾒を画⾯の中にいる⼤⼈に伝えていたこと。また担当の先⽣⽅は廊下越しに⽣徒たちを遠巻きに⾒守っていて、このプログラムに関して先⽣⽅は「⽯」となり、トラブルがない限り対話の場へ⽴ち⼊らないことを原則としているということ。
その原則について伺うと、「⼦ども同⼠の繋がりはあっても、公の場で⾒知らぬ⼤⼈と話す機会はほぼないし、何を⾔っても受けとめてくれる⼤⼈がいる、という経験をすることがこの授業の要だと思っています」と話してくださいました。
つまり⽣徒⾃⾝が本当に⾃分の思っていることを⾃由に話せる、安⼼できる環境を作るために、「先⽣」という存在をあえてないもの、「⽯」にする努⼒をされているということなのだと思います。
プログラムは⽉1 回でこの⽇はまだ2 回⽬。
外部団体と協働したオンライン授業は初めての試みでまだまだ試⾏錯誤中だということでしたが、うまくいかないことも楽しまれているように感じました。
新しいことに挑戦されている先⽣⽅の姿も、新しい授業スタイルを⽣き⽣きと楽しんでい
る⽣徒の皆さんの姿もとても素敵で、いろんな経験ができる甲佐⾼校の魅⼒にまた触れさせていただいたような取材となりました。プログラム終了後の皆さんの変化もまた楽しみです。