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ふわふわの口溶け、素材の旨み、濃密なひと時(SHOP&CAFE MORICHIKU-モリチク))

食べにいく

たどり着いたのは極上のシェーブアイス

圧倒される見た目の重厚感とは裏腹に、スプーンを入れた時の抵抗のない軽やかさ。口に運べば雪解けのように溶け、ミルクや果汁の甘さが口いっぱいに広がる…。一瞬で二度も三度も驚かされる魔法のような氷菓「シェーブアイス」は、ここ「モリチク」でしか食べられない夏季限定のお楽しみ。口コミから少しずつ広がり、今では土日や夏休みシーズンにもなると、時間待ちも覚悟の大人気スイーツになっています。

店名にもあるように、元々は竹材店です。1975年の創業以来、建築用割竹の販売を中心に、全国の販売店にその名を広めてきました。あまり公にされていませんが、愛知万博やリオデジャネイロオリンピック会場の他に、明治神宮の中庭、東京消防庁出初式のハシゴ竹など、名立たる場所で「モリタの竹」が使われています。

1987年からは鯉のぼり事業にも着手しています。県内の鯉のぼり建て込み工事全般をワンストップで引き受け、自社にて鯉のぼりと節句関連商品を販売。安心と信頼を重ねた結果、手狭になった事務所を商談スペース「MORICHIKU」としたのが年前。

「最初は、お客様に心からご満足していただくための、おもてなしスペースのつもりでした」と語るのは、代表取締役社長の森田昭三さん。奥様と二人三脚で先手の商売を続けていく中で、竹と鯉のぼりがシーズンオフになる夏場の商談スペースの利活用を考え、ハワイではお馴染みのシェイブ(削る)アイスにたどり着きました。別の仕事をしていた息子さんが、戻って稼業を手伝ってくれていたことも後押しになったようです。

発端となったのは、森田さんと奥様の「幼少期の夏の思い出」。「夏と言えば、川に遊びに行った帰りに食べたかき氷。月に~2回、お小遣いを持って出かけていました。当時は20円、時には5円足して練乳をかけて。袋に入れた小銭の音は、今でも鮮明に思い出せます」と、目を細めながら奥様は語ります。

「地域の子どもたちにも、自分たちと同じような夏の思い出を作ってあげたい」という想いから、試行錯誤の日々が始まりました。竹製品の加工を手掛けていた経験から「削り」はお手の物。最初はぶどうやバナナなど、珍しい蜜でのかき氷を提供していましたが、決して納得いくものではありませんでした。

選べる楽しさ無限大のマイシェーブ

ある日、地域の子どもたちが「ふわふわのかき氷が美味しい」と言ったのを耳にしたことで、シェーブアイスへの道が拓かれます。親子3人でハワイに行き、あちこち食べ歩きながら何度も商品開発を重ねました。そこから、削った氷にシロップをかけるのではなく、フルーツ果汁やミルクなどシロップそのものを凍らせ、薄く何層にも削って重ねるスタイルが定着しました。

ベースとなるのは、ミルク、ヨーグルト、抹茶、マンゴー、イチゴ、プリン、コーヒーの7種。そこから練乳やきな粉、白玉や黒蜜など、トッピングとソースが選べます。氷を削るのは奥様と息子さん、トッピングは奥様が担当。オーダーが入ってから削り、トッピングやソースをかけ、綺麗な状態のままテーブルに運ぶ。わずか1分程度の時間との死闘です。

待っている間に、お手製のオーダーシートに数量やトッピングを記入します。散々悩んで決めたものの、いざ中に入って他の人が食べているものを見るとそちらが美味しそうに見え、また迷う、という贅沢なスパイラルに陥ります。一人で2杯も3杯もオーダーする人がいるというのも頷けます。

この日オーダーしたのは、一番人気の「ミルクシェーブきな粉」680円。たっぷりのきな粉で覆われたミルク氷の端に、ちょこんと収まる白玉の姿が何ともいじらしい。黒蜜は好みの量をかけられます。ミルフィーユのように重なった氷の層をすくっては口に運ぶたび、風味豊かなきな粉とミルクのまるい甘さがスーッとほどける余韻を楽しめます。

「納得したものしか出さない」という妥協しない商品づくりは竹材店の頃から培ってきた企業精神。トッピングやソースも徹底して厳選しています。「例えば、原料の牛乳によってその日のミルク氷の味が変わることもありますが、試食してみてお客様に出せないと判断したらその氷は使いません」と、森田さんは断言します。

息子さんからも「氷の削り音で歯の交換のタイミングが分かる」と、削りの職人ならではの発言が飛び出しました。

こちらは、モリチクの「シェーブアイス」の原点でもある「抹茶シェーブ金時」700円。ねっとりとした半粒あんが、上品な甘さで冷えた口の中を和らげてくれます。ホイップを乗せるともはやパフェ。それにしても、頭がキーンとならないのが不思議です。

点と点を線にする、次の一手を検討

敷地からは雄大な甲佐岳を望むことができ、景観の良さも魅力です。過去には、シーズンで万人の来店があったことも。それでも現状に甘えず、常に「次は何をするか」を人で話し合っているため「毎日が楽しい」と奥様は嬉しそうに語ります。

先日訪れた80代のご夫婦からは「冥途の土産になった」とまで言われ「本当にやってて良かった」と森田さん。「商売は、何をするにしても、ナンバーでなければならない。常に点でなく一つの線で繋がっていることが大事」と、力強く語ります。

そんな森田さんの一番の理解者である奥様も、商売の基本をしっかり押さえています。得意なことは、お客様の顔と名前を覚えること。「電話口で、何年も前にお客様だったお子さんの名前を呼んでるんですよ。みんな覚えているようで…」と、森田さんや息子さんは驚きを隠せません。

鯉のぼりの季節は、敷地内に鯉のぼりが悠々と泳ぎ、店内の様相もガラリと変わります。変わらないのは、仕事へのひたむきな情熱と親子の愛。今日の「シェーブアイス」のようにぎっしり詰まっていました。

INFORMATION

SHOP&CAFE MORICHIKU(モリチク)

シェーブアイスは夏季限定(毎年4月末のGW~10月10日頃まで)
オフィシャルサイト:https://www.moritiku.com/

住所
〒861-4611 熊本県上益城郡甲佐町船津1965-1 MAPはこちら
TEL
096-234-3938
営業時間
10時00分~17時00分(オーダーストップ16時30分)
休日
火曜日