とりあえず“タピオカ屋さん”で覚えてください
今巷では“タピオカジュース旋風”が巻き起こっています。
ここ「えんがわ」に併設するカフェ「四季味屋(しきみや)」でも、7月からの新メニューとして堂々の仲間入りを果たしました。定番の抹茶や旬のフルーツで、最高のおもてなしをしてくれます。
そもそも「えんがわ」って何屋さん?と、その正体は地元の人たちにもまだまだ知られていません。カフェもあって、雑貨も販売して、ワークショップもできて、地域内外の人たちの情報発信基地になって、人々が楽しみや喜び、夢を分かち合い、心を通わせる共有空間で…。つまり、一言では説明しにくいのです。
カフェの営業は毎日ではないし、お店に立っている人がいつも同じとは限りません。そうなると“何だか得体の知れない場所”、知らない人にはそう映るかもしれません。「タピオカを始めたことで、何をやっているかが明確に言えるようになりました。見えてなかったものが、発信していくことで見えてくるんです」と、店長の森川瞳さんはニッコリ笑います。
森川さんの肩書は“とりあえず店長”。元々は木工製作を本業とする株式会社ミズタホームの社員さんです。週の大半は、同社が古民家再生モデルハウスとして甲佐町に造り上げた「山ぼうしの樹」や、御船町の作業場の一角に建てた「KICO工房」にいます。県産材や国産材の天然乾燥材を使い、安心安全な生活用品を製作しています。
店内のあちこちにコーヒースタンドやオブジェなど、森川さんの作品が使われています。彼女の人柄と同様、温かみにあふれたものばかり。「社長からは、電動のこぎりを持つと目つきも変わると言われています(笑)」。こんな穏やかな表情からは想像もつきません。
森川さんは、同社社長の「家づくり・ものづくり・まちづくりの精神」をしっかりと受け継いでいます。「仕事をしていく中で、古いものを大事にする社長の価値観に共鳴するようになりました」。ここでは社員も社長も関係なく、“とりあえずウエイター”や“とりあえず皿洗い”など、毎日違う仕事をこなしています。「だからまったく飽きることがないんですよ」と、楽しそうです。
地域で“ヨリドコロ”を造っていく
色んな雑貨の中には、町内外の作家さんのハンドメイド作品も並んでいます。場所代無料で販売できる代わりに、月2回ほど無償で店長をしてもらう、そんなギブアンドテイクの面白い取り組みを行っています。「ここで自信をつけて開業してもらえたら」と、夢を追いかける一生懸命な人々をサポートしています。
一日店長になることで、自然とお店にも愛着がわくようになり、色んなアイデアを出してくれるようになるとか。「一緒になって店のことを考えてくれるのが嬉しいですね」。モノづくりをしていなくても、お店に立つだけでもOK!色んな情報が集まってきますよ。
また、レンタルカフェもあるので、ご自慢のランチを提供したいという人にもうってつけ。過去には、大人気のカレー屋さんを呼んでコラボレーション企画を行ったこともあるそうです。
ここでは、手仕事やアート、食や農業、音楽や健康など、色んな切り口での場づくりが可能です。この場に価値を感じて「何かやりたい」と思った方には、一日単位から利用できるような運営も考えているそう。「ここでの“縁”が可能性を生みだすきっかけになれば」と、プロセスを楽しんでもらうことも大事にしています。
ご近所の電気屋さんが犬の譲渡会を提案してきたことも。「ありがたいですよね。コンセプトがしっかりしているものは、ぜひ一緒にやっていけたらと思います。最近“甲佐の町がすごく盛り上がってますね”と言われることが増えて嬉しいです。商店街でお店をしている人たちに呼び掛けて、独自のイベントを開けたらいいな」。何やら面白そうな企みがあるようです。
直感でアクションを起こしていく
こんなエピソードもありました。「ある日、ここの番地は137なんですね、すごい!と言って入って来たお客様がいて。どうやら神秘的な数字の並びらしく“無限に広がっていく”という意味をっているようです」。
時代の移り変わりの中で次第に衰退していく伝統的文化や地域産業を守るべく、時代を超えて、形を変えて、思いがある人につなげていく発信基地。ここにも“縁”を感じずにはいられません。
住んでいる住民自らが「ここには何もない、大したことはない」で片付けてしまうのではなく、町のポテンシャルに気づいて発信することこそ、これからの暮らしとまちづくりに必要なことなのだと改めて痛感させられました。
「訪れた人がワクワクする場所であり、夢をかなえる場所でもあり、そのヒントを得られる場所になれたら。これからも、ここでしかできないスタイルを追求していきます」と、森川さん。ヒト・モノ・コトを生むアートビレッジの共創は、まだまだ始まったばかりです。