甲佐高校魅力化プロジェクトを担う
創立100周年を迎える熊本県立甲佐高校の一角に、町が運営する「あゆみ学舎」があります。2017年より取り組まれてきた「甲佐高校魅力化プロジェクト」の一つとして、甲佐高校生を対象とする公営塾が設けられました。
かつてはたくさんの生徒が通う賑やかな学び舎だったこの甲佐高校も、生徒数が減りはじめ、「このまま指を加えて生徒を待っているだけではいけない。」、「生徒たちに選ばれる学校にならなければ!!」との想いから、甲佐高校をもっと魅力的な高校にするため、現在、町と甲佐高校の協力関係のもと3名の地域おこし協力隊によって「あゆみ学舎」が運営されています。
塾といってもただ勉強を教えるだけの塾ではありません。
生徒一人ひとりが持つ悩みや問題、進路のことなど、授業内容は様々です。
お話を伺うなかで、「一緒に考える、一緒に歩んでいく。」という言葉を多く聞く事ができます。
甲佐高校生のつよい味方!メンバーをご紹介します。
今回お話を伺った地域おこし協力隊の御三方です!
中央にいらっしゃるのは「越名さん」。この「あゆみ学舎」創立当初からいらっしゃいます。塾の生徒からすれば、「頼れる母」といった所でしょうか。いつも明るくほがらかな印象の越名さんは、一人ひとりとの会話の中で夢や葛藤について相談される事もしばしばなのだそうです。
「最近、進路相談を受ける機会が増えてきて、着任した頃と比べると、生徒達の進路に対する意欲が強くなってきているのを感じます。」
進学だけではなく、この先自分がどう生きて行きたいのか、相談でき一緒に考えてくれる大人が近くにいるって、すごく心強いですよね。
勉強だけでなく、生徒一人ひとりが感じる事、考える事への学び・解決への道筋を、「教える」のではなく「サポート」することを大切に考えていらっしゃいます。
続きまして、この春新しくあゆみ学舎の強力メンバーとなられたお二人をご紹介します。
先日まで大学生だったという「板敷(いたしき)さん」です。
「僕の名前、悦生(えつお)と書いてヨシキと呼ぶんです。笑」
なかなか個性的な良いお名前ですね。
明るく気さくな板敷さんは、あゆみ学舎の皆さんからは「えつお」の名で親しまれていらっしゃるようです。
「考えを深く追いかける事が好きなんです。」と仰る板敷さんは、大学時代に「探求学習」のイベントを大学生向けに開催していたとのこと。「探求学習」とは、問題を見つけ、なぜその問題が問題なのか、解決するためにはどんなアプローチがあるのかを実践する中で学習して行くものなのだそうです。
お話を伺っていると哲学的な、まるでソクラテスが降臨しているかのような錯覚に陥ります。笑
学生時代には教員を目指されていたそうで、これからどの様に生徒達と関わりを持たれるのか楽しみですね。
「日本文化も大好きで、甲佐町の歴史や文化をもっと知りたいです!」と、会話の中にも好奇心旺盛で持ち前の熱意がすごく伝わってきました。
続いては、明るい笑顔が印象的な「治金(はるかね) わかな さん」。
広島生まれ、大阪育ち、京都で大学生活を送ってきたという経歴を持つ若者です。
「町の飲食店で出会ったプラモデルに一目惚れして、今度生徒と一緒に作ることになったんです。」と楽しそうに話す治金さん。こちらも好奇心旺盛でバイタリティが溢れているようです。笑
大学では「アートプロデュース学科」を専攻されており、「対話型鑑賞」を学ばれてきたそうです。この「対話型鑑賞」とは、「みる・考える・話す・聴く」の4つを大事にしながら、鑑賞者同士のコミュニケーションを通じて美術作品を読み解く鑑賞法です。未就学児から大人までのあらゆる世代が参加でき、芸術作品を作者や技法から鑑賞するだけではなく、作品をみた時の感想や、そこから想像される事をもとにして、対話をしながら鑑賞するという事なのだそうです。
現代はいろんな感性、個性があって良い社会です。世界から見たら小さな甲佐町にも、きっといろんな意見や個性があると思います。
「対話型鑑賞を取り入れたイベントをやって行けたら良いなぁ。」と語ってくれた治金さん。新しいチャレンジで甲佐町の個性豊かな人や魅力を引き出してくれる事と思います!
残念なことに彼らが着任してひと月が過ぎようとしていた取材時、新型コロナウィルス感染症による自粛要請中で、学校の中もガランと寂しい様子でした。生徒も家庭学習中とのことで、「まだまだ本格始動できていないんです。」とのこと。
しかし、現代には「スタディサプリ」など、オンラインを通じて授業を受ける事ができるシステムもあり、「あゆみ学舎」でもその家庭学習のサポートができる様にシフトチェンジされていました。
地域との繋がりを大切に
「あゆみ学舎」が設立されて3年が経ちます、これまで高校生と地域をつなぐ様々な取り組みが積極的に行われてきました。
なかでも、地域から集まった100人の大人達と2分間ずつのおしゃべりができる「トーク・フォークダンス」は普段あまり関わりのない年代、職業の大人達と関わりが持てる楽しいイベントとなったようです。
初めは不安感が見え隠れしていた生徒達も、会話が始まると前のめりになって目をキラキラさせて話していたんだとか。
「この経験が一人ひとりの自信に繋がったらいいなと思っています。」
当時参加されていた方にお話を伺った際には、「高校生と話す機会が持てて楽しかったよ〜。」と、イベントを絶賛されていました。商店街のおじさま方にも大変好評でしたよ♪
もう一つご紹介したいのが、塾の入り口に立つ可愛い看板です。こちらは甲佐町内にある「山ぼうしの樹」で同施設を運営されているミズタホームさんと一緒に作られたそうです。
木の温もりが優しい雰囲気の手作り看板、塾に来る生徒を温かく迎え入れてくれている様ですね♪
こんな風に「あゆみ学舎」では学生時代から積極的に地域との繋がりを持ったり、大人達と交流するという体験会を定期的に開催されています。この経験は生徒達にとっても貴重で価値のある事だと思います。きっと将来、何かの役に立つ日が来る事と思います。
机上の勉強だけではない、学びへの挑戦
今年で3年目を迎える「あゆみ学舎」では、今後ますます増えていくと思われる「AO・推薦入試」突破に向けて、対策講座を始めています。受験に向けての学習計画や、小論文の指導にも力を入れているそう。
「大学へ行ってみたい。」と話す生徒も増えてきているそうなので、生徒さんの希望実現のためにも頑張り時ですね!
勉強以外では、ドローン部の活動を始めるそうです。といってもスタッフはまったくの門外漢。甲佐町の空撮を目標に生徒と一緒に取り組むそうですが、教えてくださる方がいらっしゃいましたら、ぜひ!お願いします!と仰っていました。「ゼミ講座」でも、トークイベントやプログラミング教室と、多岐にわたる内容を計画中だそうで、メンバーとなった板敷さんと治金さんも、これから取り組む講座について「どんな内容にしようか・・。」「どうやって皆に楽しんでもらおうか・・。」と、色々考えを巡らせていらっしゃいました。
「いつでも遊びにきてね〜。」と、気さくに仰ってくれる「新生・あゆみ学舎」。甲佐高校がもっと魅力ある高校となる様に、これからどんなチャレンジをされるのか、注目ですね!