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古きよき田舎の原風景をこれからも甲佐町に残したい(「西寒野のかけ干し米」の井上さん)

会いにいく

かけ干しの現場を見せていただきました

今回お話をうかがうのは、甲佐町の西寒野(にしさまの)にて、かけ干し米の生産に取り組まれている井上さんです。元々甲佐町役場で農業振興の担当をしていて、5年前に農家へと転職されたという井上さんに、かけ干し米の魅力についてお聞きしました。

お米の収穫は10月初旬から西寒野の田んぼにお邪魔しました。「無農薬は当然ですが、うちでは除草剤も使っていません。夏場には雑草が2週間ほどで刈る前と変わらないくらいに成長するんですよ。その時期は手入れが大変でしたね」と、収穫までにもたくさんの手間をかけていらっしゃいます。

通常の機械刈り取りの場合、コンバインが刈り取りと一緒に脱穀も行います。しかしかけ干しの場合、刈り取った稲を少しずつ束にしてその場に置き、これをトラックで回収して木で支えた竹竿にかけていきます。「おいしいお米づくり」としての生産的な付加価値とともに、刈り取った稲を干し竿にかけて乾かす様子が景観的なアピールにつながる。たとえばかけ干し米づくりを農業体験として観光コンテンツ化するとともに、古きよき山里の原風景も楽しんでいただければ。そのきっかけづくりのために、かけ干し米の生産を始めたそうです。

10月初旬でも汗をかくくらい大変なかけ干し作業。力を使う仕事だけに、井上さんの腕も立派なものです。

かけ干し米の田んぼに使われているのは、およそ2ヘクタール。さすがに一人ではかけ干し作業が終わらないため、農家の隣人が手伝いに来てくれるそうです。

天日乾燥によってお米の旨みを集める

機械での収穫は刈り取り後即脱穀のため、田んぼの水を抜き稲がちょうど乾燥した頃に収穫します。対してかけ干しは自然の力に任せてじっくり天日で乾燥させる期間を考慮し、約1週間ほど早めに収穫を行います。「私たちはかけ干しして完全に種としての栄養を溜め込んだお米を脱穀し、それを「籾」として保存しています。生命力を宿した籾ととして低温保存しているから、お米としての食味が落ちにくい」と、井上さんは語ります。

農業を始めて丸4年。きっかけはふるさとへの恩返し

「公務員として働いてきたぶん、今度は自分から地域に貢献できればいいなと考えていました。そして自分ができることの一つとして、農業を通じて甲佐町に受け継がれてきた伝統を守りつつ、甲佐町に住みたいと思う人たちを増やしていけたらなあと思い、5年前に役場を辞めて農業を始めたんです」。そう語る井上さんの目標は、個人でも経営が成り立つような農業の実践。自分たちがその道を示すことで、若者たちが農業へ関心を高めるきっかけになりたいと思っておられます。

ちなみに、井上さんは甲佐町の農産物や加工品の直売所「ろくじ館」の事務局長も務めておられます。

甲佐町の農家さんが直接持ち込まれるため、新鮮な農作物が手に入るのがポイントです。

一番の売れ筋はお弁当やお惣菜。高田精肉店の名物「にらメンコ。」も、もちろん販売されています。

井上さんの知り合いが持ち込んだ多肉植物の苗。掘り出し物が見つかるかも!

甲佐町の自然を生かした体験型ツアーも企画したい

最後に、井上さんにこれからの目標についてお聞きしました。「今はとにかく始めたばかり。もう少し見通しがたてば気の利いたことが言えるかもしれませんが、今はまだ、ひとまず走らんといかんかなって思ってます(笑)」。実は、西寒野は甲佐町の中でも美里町に近い位置にあり、ハートができる石橋としてSNSで注目を集める「二俣橋」にも歩いていけるような距離。

「近隣の名所を紹介するツアーも企画したいという。日中に楽しめる遊び場を知ってもらうことが大切で、それが再び訪れるきっかけにもなると思うんです。こちらでもちょうど空家問題が出てきていますが、これを民泊に利用していければと。まだまだ長い道のりにはなりそうですけどね。宿泊を通じてその土地の名物や美味しいものを食べて、飲んで、甲佐町に繰り返し遊びに来てくれる人が増えたらうれしいですね」。

かけ干し米の生産を通じた井上さんの夢は、これからも広がっていきます。

INFORMATION

「西寒野のかけ干し米」の井上さん

職業
農家
出会える場所
ろくじ館で会えるかも!? MAPはこちら